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英雄世界の英雄譚

   

英雄世界の英雄譚 (ダッシュエックス文庫)

《あらすじ》
魔法使いグレンは、一〇〇年前、“聖女”リディアを助けた謎多き魔法使い“白銀の英雄”に憧れていた。だが髪の色が同じだけで、その実力は天地ほどの差があった。ある日、巨大な地震に襲われたグレンは、見知らぬ世界で気がつくと、同年代の少女が率いる一団に出逢う。解放軍のリーダーであるその少女の名はリディア。グレンは一〇〇年前に転生していたのだ。建国記に描かれていたリディアとの違いに驚きつつも行動を共にするグレン。さらに、いるはずの“白銀の英雄”は見当たらない。そしてリディアを懸命に補佐し旅するグレンの前へ、同じく転生してきた幼馴染みのジークが現れ―伝説を旅する王道英雄譚、堂々開幕!

桑島黎音さんのイラストが表紙を飾り、さらにデザイナーの力を添えたときの圧倒的な訴求力を放つカバーデザイン。店頭に並んだ時の存在感の高さで、数ある新刊群の中から思わず目に留まったので、かねてから名前を存じ上げていた著者だったけれど、今回が初となる著作。
あらすじから漂う“白銀の英雄”の正体、そして物語が進むにつれて「やっぱり白銀の英雄の正体は……」と核心に近づく流れ。ネタバレとも思えないネタバレなのでハッキリ言うと、『白銀の英雄=100年前の世界にタイムスリップした主人公』というオチ。未来に語り継がれる英雄譚は観測者の意図とその他大勢の人間の影響を受けるものだとは思うけれど、英雄を美化し過ぎた結果、100年前に解放軍を指揮した“リディア”の人間性が、虚実入り混じる人物像を創り上げていたのには笑えました。

100年前にタイムトラベルを果たして世界が辿るべき歴史を正しく導く主人公の奮闘は、敵対勢力との敗北がある種の『世界の破滅』を暗示させる物語になっていて、リディアに死のリスクがかかった突発的な戦闘のどれにも緊張感が生まれていて読み応えがあった。
やっぱり、戦闘に対しての明確な足かせが発生すると、戦闘に重みがあって良い。

“白銀の英雄”の活躍の物語に続巻が出るかどうかは定かではないけれど、王道をなぞった異世界風ファンタジー作品には是非とも続巻にまで踏み込んでもらいたい。