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『図書迷宮』感想

   

図書迷宮 (MF文庫J)

図書迷宮 (MF文庫J)

ストーリー
あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。第十回MF文庫Jライトノベル新人賞、三次選考通過の問題作、ここに刊行―――。

刊行前から「MF文庫J史上最厚」だとか「規格外の問題作」だとか盛大に宣伝されていた話題作。
その内容は、本が読者に語りかける「二人称」小説にしてメタ小説という意欲作でした(※メタ小説が何かはよく分かってない)。
重厚かつゴシックロマン溢れたストーリーの中に、様々な手法を用いて読者を楽しませようという工夫が満ちていて、何度も混乱させられつつも面白く読めました。


「あなたは、走っていました。」の一文から始まる今作。そう、これが二人称小説……本が私に語りかけてくる!
それなりにライトノベルを読んできたつもりですが、二人称の作品というものにはついぞ出会ったことがないような。知らないだけで、他にもあるのかな?
全て丁寧語口調ということもあって初めこそ少し違和感がありましたが、案外すんなりと読むことができました。
さて、今作の主人公はとある理由により記憶を失いつつある少年。吸血鬼の少女から渡された<持ち主の記憶を書き記す>魔導書により、その記憶を保持しています。
他ならぬ今作の語り手でもあるこの魔導書のページがなくなったとき、主人公の記憶は失われる……。そんな設定のもと、魔導書と実際の本のページを連動させることでリアルタイムに時限を予感させ、読者に緊張感を与える仕掛けが見事にハマっていました。これは電子書籍では味わえない、紙の本ならではの楽しみですね。


肝心のストーリーは、幾多の魔導書が眠る「図書迷宮」を舞台に、主人公の少年が吸血鬼の少女とともに父親の仇を探す魔導ファンタジー。
まず語るべきは魅力的な世界設定ですね! 地下深くの魔導書だらけの迷宮、浮遊島や永遠に続く滝が広がる魔法の世界。そしてヒロインは吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)。はい、好き。これ全世界の中二が好きな単語ね。
物語はとにかく最初から謎だらけで、主人公はなぜか記憶を失っているし、魔法が使えないし、一緒にいる吸血鬼の少女との関係すら不明。
そんなわけだから読者としても暗中模索状態で流されるままに読み進めて、まあそれなりに激しいバトルもあるし、アルテリアやエリカとの日常は微笑ましいけれど、こんなことでページを使っていていいのかななんて思っていたら、唐突にやらかしてくれるわけですわ。
なんせ二人称ですからね。当然こういうこともやってくるんだろうと思っていましたが、しかし徹底的ですね。
中終盤はもう、物語の中にいる筆者が中から物語を動かすといった体で、いやはやどうして難解なもの。一度で全部理解するのはちょっと難しいかな……。
どこまでが真実でどこまでが嘘か、作中作と本当の物語の境目はどこか、誰が真の筆者なのか……。とことん読者を翻弄しつつ、最後の最後には愛の物語なんてものへと落とし込んじゃう俗っぽさが、くう、たまんない。
こんな結末を見せられたら、全部ぶん投げて納得しちゃうしかないのです。参っちゃったぜ。
読み終わってみれば、色々な形で楽しませてくれる満足の1冊でした。続刊にしろ新作にしろ、作者の次回作も楽しみにしています。


イラストはしらびさん。出だしの見開きイラストが非常に印象深くて好きです。
他のイラストも、可愛さ、重苦しさ、狂気、色んな思いを伝えてくれました。見事。


義妹モードエリカ可愛い……義妹モードエリカ可愛くない?